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雪雪/醒めてみれば空耳

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2006-09-11 空想上の後悔

_ 自分の身の回りに実際に起こった出来事や忘れ難い言葉を、折に触れ話しているうち、ある日テレビで芸人がネタとして話していたり、公募本に誰かのエピソードとして掲載されているのに何度か出会ったことがある。

ぼくが、斬新に言い回したつもりの言葉も、誰かにとってはどこかで見知った言葉であったりもするだろう。

言葉はほとんどなんの労力もなく、次々と伝えられていくことができる。受け渡されていくとき、力ある言葉は重くて運びにくく、そうでない言葉は軽くて運びやすい、ということはない。それが言葉のやっかいなところであり、すばらしいところでもある。

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あなたが空しく生きた今日は、昨日死んでいった者が、あれほど生きたいと願った明日

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これは趙昌仁『カシコギ』の一節で、たくさんの人の心を動かし、あちこちで大量に引用されている。ぼくもこれを読むと胸を鷲掴みにされる。

言っている内容は深くはない。容易に気付くことができることだが、言い方ひとつで、ありふれた発想が宝石になる。それが言葉のやっかいなところで、すばらしいところでもある。

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力ある言葉の力など知れたもので、一瞬人の心を熱くして、熱が冷めれば忘れられてしまう。けれど心に宿った言葉の力は、何度でも思い出すことができる。何度でも熱を発してくれる。

言葉が、人の背中をどこまでも押してゆくことはできないにせよ、誰かがもし、ほっとする未来と悲しい未来の境界線上にいるときには、少しだけ足りない勇気にほんのひと押しを加えるぐらいのことはできるだろう。5%あった可能性が6%になったために叶う、そういうこともあるだろう。

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3年前、2ちゃんねるをさまよっていたとき、「10年間抱いてきた希望が潰えた。精一杯やってきたことがぜんぶ無駄になった。10年前に戻ることもできない。この先、生きていてなんの意味があるのかわからなくなった」そういう意味の書き込みに出会い、レスを付けた。

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「10年後にはきっと、せめて10年でいいからもどってやり直したいと思っているのだろう。

今やり直せよ。未来を。

10年後か、20年後か、50年後からもどってきたんだよ今」

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この言葉が思わぬところで引用されているのに何度も出会って、検索してみると大量にヒットした。前後にストーリーが付加されて、フラッシュになっているものまである。驚いた。

いずれにしても、この言葉がほんのちょっとでも誰かの背中を押してくれることがあるなら、それはさいわいだと思う。

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これは10年前のぼく自身へのメッセージでもあった。あのレスを付けた日の10年前、ぼくは二階堂奥歯に出会った。未来の自分からのメッセージはぼくに伝わっていて、10年前の背中を押した。彼女を失った時から、出会った今に戻してもらったのだと思った。何年戻ったのか、それは分からなかったけれど。

ぼくは未来の記憶も経験も持っていなかったが、気にはしなかった。どうせ戻してもらう前にはできなかったはずの選択をひとつでもできれば、未来も、ぼくの得る経験も変わってしまうのだ。そして彼女も。

10年を取り戻してもらっても、人は大したことができるわけではない。ひとつのことに全力を振るうことはできない。その力を支えている別のことを大切にしなければならないし、がんばれば障害もあらわれる。あちらを立てればこちらが立たない。ベストを尽くしたと納得できるようにはならない。

せいぜいもう少し思い切ったことができ、休息を後回しにして急ぐことができ、無駄と分かっていてもしてしまう堂々巡りの回数を減らせるくらいだ。そしてそれが決定的であることを祈るしかない。

自分に好意的に解釈すればぼくは、2年を戻ってそれを10年にしたのかもしれない。あるいは周囲の努力を無にして20年を10年にしてしまったのかもしれない。どちらもあり得ただろう。

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ベストを尽くしたと納得できるようにはけっしてならない。どんな場合でも起こらなかった別の可能性、実行しなかった別の方法が存在するから。ゆえに、どんなにがんばることができたとしても、人は後悔しようとすればできる。

なにか経験して、後悔して悟ること。「どうしてこんなことがわからなかったのか。あれぐらいできたのではないか」と思うようなことは、経験する前に悟っておきたい。「どうしてこんなことが」と言いたくない。その程度のことならやらかす前に空想して後悔しておきたい。後悔を先に立てたい。1年でも5年でも10年でも。失ってからどんなに大切だったか気付くなんて御免だ。

そんなふうに思ってもどうせ浅ましくだらしなく頼りない自分なのでおなじような失敗を繰り返すのだが、期待していないからがっかりもしない。耐え難い悲しみをせめてひとつ余計に、できるならもうひとつ余計に回避できるように、もう少し思い切って、ちょっと急いで、せめて堂々巡りをいい加減にしてゆくだけだ。

死ぬ前にする後悔を、今しながら。

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本日のコメント(全17件) [コメントを入れる]
_ 虹を指さすな(仮) (2006-09-13 01:57)

名文! これを読んだだけで、今日生きててよかったです。

_ 雪雪 (2006-09-13 15:39)

☆虹を指さすな(仮)さん、ありがとうございます。「よかった」と言ってもらえてよかったです。<br>心に去来するばかりで、言いようのないことがたくさんあります。<br>ゆっくりと、急いでゆくだけ。

_ Lana (2006-09-13 18:41)

何も言いたい言葉が見つかりません。<br>雪雪さんのところは言葉の宝石箱みたいですね。<br>眺めているだけでも満たされます。

_ 虹を指さすな(001) (2006-09-14 02:55)

「雪雪さん、初めまして。」(Lana さん、こんばんは。お伝えしたいことがあるので、<br>               よかったら★印部分だけ読んでください)<br><br>と、ご挨拶もなく、昨日は、思わず勢いで書き込んでしまいました。<br>                 ↓<br>              (シマッタ。「読んだ」→「読めた」に修正したい……)<br><br>せっかくなので「虹を指さすな」の名前、勝手に授けていただきましたが、<br>お許しいただけますでしょうか?<br>今日からは番号制にしますので、とりあえず名乗ったもの勝ちで 001 ゲット。<br>って、また許可いただく前に、勝手に授かってますが。<br><br>10 年前に戻れるなら、もっと本を読んでおけばよかった、<br>と思っている今の 10 年後、<br>10 年前に戻れるなら、もっと本を読んでおけばよかった、<br>と思うでしょうから、<br>もっと今の今、本気で読まなければなぁと思っています。<br>素敵な本たち、これからもぜひ、たくさんご紹介ください。<br>たとえば『ユニコーン・イン・シュガーキューブ』、<br>教えていただけなければ、永遠に通り過ぎてしまうところでした。素敵!<br><br>叙景集も大好きです。全部読みました。再読したりもします。<br>これからは、「500文字の心臓」も、のぞかなければ。<br>超短篇といわず、ぜひ長編小説も書いていただきたいです。<br><br><br>で、ものすごく遅くなってしまいましたが、やはりご報告とお礼を。<br><br>『記憶の国の王女』ですが、じつは 6 月 2 日の情報を読み、<br>すぐに「保留可で!」と頼んだところ、入手できてしまいました。<br>もちろん初版、しかもものすごく美本で、<br>手にした瞬間、雪雪さんの愛情がひしひしと伝わってくるようでした。<br>大切にストックしていらしたんでしょうね。<br>ところで書店のご主人から聞いたのですが(★ここからが重要です★)、<br>注文を入れたところ、出版社の営業の方に、即「品切れです」と言われたそうです。<br>というのは、「カタログから落ちている」(との表現をされました)とのことで、<br>たぶん普通の書店さんなら、ここで撤退のところを、<br>「イヤ、お客さんが言うには仙台から返品があるそうで」と交渉してくださったのです。<br>雪雪さんのストックは、最終的に何冊くらいあったのでしょう?<br>( 2006年 2月 14日 に「十冊を切っちゃいました。」だと、少ないかな)<br>でも、もしかしてそんな門前払い状態なら、まだ望みがなくもないのでは?<br>「保留可」だけでは入手できない状態なのかも、と思い、いちおうお知らせします。<br><br>書き込みの機会を逃し続けてしまい、今頃になってしまいましたが……<br>もしよろしければ、ダメモトでもう一度試してみてください。<br>期待させて、やっぱり品切れだと、かえって申し訳ないですが、<br>お知らせする後悔 or しない後悔で、ようやく前者の可能世界をとりました。<br>(業界の専門知識がないので不明ですが、注文のコツや確認方法でもあれば。★以上)<br><br><br>しかし最後の 3 ページが深くて、それが「誰」なのか、もやっとしたまま、<br>確信がもちきれないという、もしかして選ばれていない読者なのかもしれません。<br>(ここ、どう読まれましたか? 試験問題でもつくれそうですね)<br>最悪、美本のままでストックしていると思って、許してください。<br>(いつか、 Lana さん、あるいはどなたかに差し上げるために)<br>でも『記憶の国の王女』を読んでから、どの「本/物語」を手にしても、<br>表紙を開こうとするたびに、ドキドキしてしまいます。<br>少なくとも、それくらいの読者にはなれましたが。<br>開けるよ〜、とか言ったりして。(バカ?)<br><br><br>あとは余談を、2つ。<br><br>『記憶の国の王女』の類書に、ちょっとだけ入りそうなお話がありました。<br>柴田元幸編訳『どこにもない国 現代アメリカ幻想小説集』のなかの、<br>「失われた物語たちの墓」、もし未読でしたら p138 など開いてみてください。<br>あらかじめポーを読んでおくと、さらに読み込めるかもしれないです。<br>あ、タイトルどおり、決してかわいいお話ではないですよ。(陰と陽みたいな類書です)<br><br>『記憶の国の王女』が入荷したとき、もう1冊文庫を頼んでいたので(『流亡記』です)<br>「1冊は品切れでした」の留守電を、とても気落ちして聞き、<br>文庫1冊ぶんの残金で書店に寄ったところ、うれしいカン違いが判明。<br>あれれ、でもそうすると、お金がないぞ。<br>するとご主人、「早く読みたいでしょう。お代はこの次でどうぞ」と渡してくれました。<br>こういう「町の書店っぽい」美談体験は初めてで、余計に感激でした。<br>ありがとう、M書店!<br>『八本脚の蝶』も、ちゃんと置いてあったんですよ。<br><br>でも、駅の反対側の 30 年続いた「町の書店」は、<br>駅ビルに大手書店進出のせいか、とうとう閉店してしまいました。<br>「町の書店が消えている」とは聞いていましたが、ついに身近で起こりました。<br>閉まったシャッターを見るたびに、とても複雑な気持ちになります。<br>大手書店、どうも立ち読み/座り読みを増長しているだけで、<br>地元の全体的な売り上げを落としているような気がしてなりません、が。<br><br><br>本たちには、雪雪さんからご紹介いただく、という幸せがあります。<br>私たちには、そんな本たちに出会う幸せがあります。<br>でも、何げなく出会って、「うわあ」となって、<br>そして後から「あ、それって雪雪さんもおすすめだったよ」と知るのが、今の理想です。<br>そういう 10 年後に、したいものですが。<br><br>「ともちゃんの幸せ」の『デッドエンドの思い出』も、その幸せのひとつでした。<br>この幸せ感覚、前にもあって、久しぶりに記憶の国から出てきました。<br>ナボコフの短篇「恩恵」(ナボコフ短篇全集1 作品社 2000 年)です。<br>この短篇大好きで、初読から 1 カ月くらい、毎晩眠る前に読んだものでした。<br>こちらも短く、たった 8 ページなので、ダブルで読むと、さらに幸せに眠れそうです。<br>ありがとうございました。<br><br>では、長くなってすみません。<br>これからも、たくさんの本とたくさんの「景」が、雪雪さんを通して輝きますように。<br><br><br>あ。 あの……(って、まだ書くか。これで最後です)<br>正確なご事情を知らないまま、7月ごろの文面からの想像で書いてしまいますが、<br>雪雪さんほど、書店員さんにふさわしい方はいらっしゃらないと思います……。<br>手書きの POP がたってたら、POP ごとレジに持って並んでしまいます。<br>一緒に袋に入れてくれないなら、そぉっと盗んでいきます。<br><br>雪雪さんの言葉たちが、抵抗力として生じるなら、<br>その「鬱傾向や不安」に感謝しなくてはならなくなりますが、<br>それは読み手だから言えることであって、<br>書き手にはツライ時もあると思います。<br>「次の日記」の日付けが、システム上のもの、<br>あるいはすでに書かれた特別な日付けの未来の日記であればよいのですが、<br>なんだかいつも気になります……。<br><br>心に去来すること、ゆっくり長く、どうか書き続けてください。<br>まだ「言いよう」にならないことが、<br>そんなにたくさんあるなんて、つい楽しみにしてしまいます。<br><br>では、長文失礼いたしました。<br><br>これからも毎日、読みに来ます。

_ 雪雪 (2006-09-14 13:45)

☆Lanaさん、いつもありがとうございます。<br>褒め言葉は最高の栄養分です。<br>恐縮しません。元気が出ます。現金に元気が出ても、現金は出てこないのが欠点です。

_ 雪雪 (2006-09-14 14:13)

☆虹を指さすな(001)さん、長いよ! というのはうれしい悲鳴です。<br>あ、「虹を指さすな」を名乗る人があらわれた、と思いましたが、照れくさくて言及できませんでした。だってね、ある種の、独特な意味の、ラヴレターみたいなものでしょう? こちらが出したのか、そちらが出したのかについては検討の余地がありますけれども。<br>浮き上がって漂っている名前は、「私だ」と思った人のものだと思います。どうぞお名乗りください。<br><br>反応したいところがたくさんあって、一気に書けないので、ゆっくり書き加えていきます。

_ Rum (2006-09-15 01:32)

コメントをしたい。と思い、携帯を見つめて早4日。もう、4日もたってしまいました。寝る前に自分や誰かのブログにかける時間、3日連続このコメントを考えるうち眠ってしまい今日こそは、と。<br>なんて、やっぱり言葉が思いつかず自分のことばかり書いてます。<br><br>私も「10年後〜」にたくさんの人と同じように背中を押された気がしました。今日も明日もどんな些細な時も未来をやりなおすために与えられたものかも知れませんが、今、特にそれを強く感じる時期に立っているのでそっと押すなんてレベルじゃなく両手で思いっきり押し出されたような気分です。<br>自覚もないまま周りの流れになんとなく一緒にのって頑張っているような、いないような毎日ですが「10年後〜」を読むともう少し頑張ってみようかな、と思います。きっとこれからも元気をくれる言葉です。ありがとうございます。<br>なんだかもっともっと書きたいことはあったはずなんですけど。。今日は眠る前に投稿しますね。初コメントで緊張気味なRumでしたー。

_ 虹を指さすな(001) (2006-09-15 03:52)

同じく緊張したに 1 票〜。 ツッコミを入れたい。(←当時は)と思ってから、<br>私など 4 日どころか、結局ずるずる 3 カ月もたっちゃいました……。<br>そんな背中まで押してくれた「10 年後〜」、<br>やっぱり、これを読むために戻ってきたのかもしれないです。<br><br>雪雪さん、ご許可ありがとうございます。<br>「すてきな名前。誰かか何かに付けてあげたいと思う。」<br>と思った人は、きっと他にもたくさんいて、<br>だからこの名前は知らないところで、<br>もっとふさわしい、すてきな誰か/何かに、たくさん付いていると思います。<br>それこそ、名乗りの瞬間を、飛び移れるくらいに。<br>で、とりあえず1コのシュガーキューブとして、ここに置いてみました。<br>恐れ多くも「私だ」とは思えませんでしたが、<br>分母をたくさん作ったうえで、「私のだ!」にしたくてたまりませんでした。<br><br>流木のとなりにボトルが落ちていて、<br>あまりに素敵な手紙が入っていたものですから。<br>拾ったことだけでもお知らせしたくて、<br>署名を入れて、海に戻しました。<br>どうやら差し出し人のところに無事に帰れたようで、よかった。<br><br><br>よし、次は、『神の目の小さな塵』と、『世紀末オーガズム』ですね!<br>『神の目〜』、 SF 系ではない私でさえ、読んでみたくなります。<br>フィリップ・ K ・ディックの『にせもの』を薦められて、<br>とても良かったのですが、でもこれは正確には、<br> SF 系の方々が燃える/萌える作品ではないですよね?<br>未読をさらす恥はありますが、傑作をこれから読めることって、<br>読んだ人に対して、「これから初読!」の楽しみを自慢できちゃいそうです。<br>どうです、うらやましいでしょう、雪雪さん。 ?<br><br><br>と、今日もじゅうぶん長いのですが。<br>ゆっくり書き加えていただけるなんて、楽しみが長く続く楽しみ。

_ 雪雪 (2006-09-16 02:07)

☆あ、Rumさん来てくれたんですか。ありがとうございます。<br>ぼくもコメントに返答するまで時間がかかるし、メールの返信などもちゃっちゃとできません。<br>どうぞごゆっくり。<br><br>コメントをつけるのに緊張していただけるのは、光栄なことだと思います。じき慣れますよ、と暗にまたのコメントを期待。背中押しw

_ 雪雪 (2006-09-16 02:41)

☆虹を指さすな(001)さんへ<br>>叙景集も大好きです。全部読みました。再読したりもします。 <br>>超短篇といわず、ぜひ長編小説も書いていただきたいです。<br><br>ありがとうございます。叙景集は、まあ出来の遺憾は問わないでいただくとして、書き始めてみたらどんどん書けてしまい、自分でも驚いたのでした。 <br>叙景集には全体の背景になる幾本かの縦筋があるので、ある意味、長編といえば長編でもあるのです。当初1000で完結かな、と思っていましたが、縦筋がゆっくりしているので先が見えなくなってしまいました。<br><br>『記憶の国の王女』、届いてよかったですね。ほぼ間違いなくぼくが積んでいたものでしょう。Lanaさんのもとにも届いてやって欲しいなあ。<br>と言いますか、文庫化するべきだよ! 徳間さん。腰巻か解説書かせてくれい!

_ Lana (2006-09-16 21:04)

≫虹を指すな(001)さん<br>初めまして!<br>お名前を見た瞬間に「あっ」と思いました。<br>すてきな名前を頂きましたね。どうか大事にしてあげて下さい☆<br><br>『記憶の国の王女』届いたのですね!<br>私も「保留可で」のみしか伝えていなかったので、即断られてしまったのかもしれません。<br>今度は仙台からの返品の件と一緒に再チャレンジしてみようと思います。<br>もし今手に入ったら、それはほぼ確実に雪雪さんのストック分ということになりますよね。<br>雪雪さんの日記で知って、ご本人である雪雪さんが大切に温めていらした本が届くというのはなんとも感慨深いです。<br>この時期に出会ったのも一つの運命なのかもしれないと思いました。<br>何より一冊の本をこれだけ必死に求めたのは生まれて初めてです。<br>なんだか「絶対手に入れなくちゃ」という使命感のようなものが湧き上がってきました!<br>お知らせする後悔を選んで下さって本当にありがとうございます。<br><br>ところで、虹を指すなさんのM書店美談に感激しました。<br>ご主人の本への愛が伝わってきますね。<br>何しろ『記憶の国の王女』の入荷を成功させたのだから凄い!<br>私もそんな書店に出会ってみたいです。<br><br><br>雪雪さん、<br>>腰巻か解説書かせてくれい! <br>ぜひ書いてください!<br>文庫化したら毎日持ち歩く勢いですよ。<br><br>それから、ささやかかつ心からの希望で、雪雪さんの叙景集が本になったらいいのになぁと思っています。<br>もっともっと多くの出会うべき人たちに雪雪さんの言葉を届けたいです。<br>でしゃばったことを言っていたらすみません。<br>でもこれは本当の気持ちです。

_ 雪雪 (2006-09-17 00:04)

☆虹を指さすな(001)さんへ<br>>「次の日記」の日付けが、システム上のもの、 <br>>あるいはすでに書かれた特別な日付けの未来の日記であればよいのですが、 <br>>なんだかいつも気になります……。 <br><br>そこになにかロマンティックな意味づけでもしたいところですが、あのぅ、一度入力してしまうと日付は消せないんですよ。本文は消せるけど。<br>たんなる誤入力なのです。ですからご心配もご期待もいりませんw でも、その日(11/1)が来てみたら、思わぬ特別な意味があったりして。<br><br>瑣末ですが、上のほうのレスで「如何」を「遺憾」と誤字ってしまいました。コメントは修正できないからやだなあw

_ 雪雪 (2006-09-17 00:23)

☆Lanaさんへ<br>ずっと前、友人が叙景集が好きだと言ってくれて、<br>「山や野原や街に持って出て、ぼろぼろになるまで読みたい。モニタで読むのは似合わないから、紙メディアになってほしい」そういう言葉をくれました。<br>もともと超短編の身軽さが好きだったのですが、「外で読まれたい」とはっきり意識するようになりました。<br>書くときも、自転車で外を走り回っているとき、頭の中で書き上げられるところが好きなんですけれども。<br><br>本になったらいいですねえ。ぼくにとっても。

_ 虹を指さすな(001) (2006-09-17 04:18)

雪雪さん、Lana さん、こんばんは。<br>『記憶の国の王女』の件、10 年後から戻ってきたかいがありました。<br>雪雪さんストック、Lana さんにもぜひ届きますように!<br>文庫化されたら、腰巻「か」解説ではなく、両方読みたいです。<br><br>叙景集、作風として「同じ箱に入れるなら、これとこれは一緒。」<br>は、あると思っていましたが、そうですか、ちゃんと縦筋があったのですね。<br>なにしろこの量と質を、「毎日どんどん書けてしまう」あたりから、まず唖然です。<br>今日からは、長編として読む、という新しい楽しみができました。<br>ひとつひとつが超短編でありながら、まとまった全体もひとつの長編になる。<br>って、これは本として完成してほしい! に私も1票です。<br>全貌を見渡しつつ、きちんと縦筋も読み取りつつ、<br>手のうえで、じっさいに頁をめくりたい。<br>では 11 月 1 日の日記、「書籍化の話がきました!」になるといいですね。<br><br>遺憾? ……って、そういう表現なのかと読み流してました。<br>新しい語感として、槍もって狩ってもいいかもですよ。<br>私も改行修正したいですが w<br><br>今日さっそく『神の目の小さな塵』を取り寄せお願いしがてら、<br>ここの頁を、美談のM書店ご主人にもお知らせしてみました。<br>「いやぁ」とか照れていらっしゃいましたが、いつもお世話になってます。<br>「後で読んでみます」って、地元の余計なことも書いてるので、<br>美談感激!だけ読んでくださいね……。<br><br>こっちは図書館ですね。 → オリアーナ・ファラーチ『ひとりの男』(講談社)<br>毎日つぎつぎ出てくるから、うれしい悲鳴です。<br>いやー、しかし雪雪さんと Iさんが同僚で並ぶ図、まるで剣豪を想像します。<br><br>こうしてスゴイ本が、毎日どんどん出てくるのも、本当にスゴイ。<br>自分で行き着かなくては、と思うのですが、つい素晴らしい地図に頼ってしまいます。<br>これからも、どうぞよろしくお願いされてください……。<br><br>ところで、すでに名前負け(←でしたっけ。正しいようで誤解の日本語?)してるのは、<br>もうこの時点で大事にすることに反するのかもしれませんが、仕方ないです。<br>じゅうじゅう本人自覚済みなので、ご不愉快に思ってる方、何卒お許しくださいを。<br><br>ということで、よかったらしばらく見つめさせてください。<br><br>雪雪さん、素晴らしい叙景に頭を占領されて、自転車、ころばないでくださいね。<br><br>では。

_ 雪雪 (2006-10-06 17:38)

☆虹を指さすな(001)さんへ<br>この日付ではたいへん御無沙汰いたしました。「失われた物語たちの墓」を立ち読みしてまいりました。<br>うーむ、技巧と素養のある作家が、このテーマでとりあえず書いてみましたという感じでしょうか。「仲間だ」という感じはいたしませんでしたw<br>でも、知らない作品を紹介してもらうのはたいへん嬉しいです。また教えてください。<br><br>ちなみに最近文庫になった、飛浩隆『グラン・ヴァカンス』は、まっしぐらに類書だと思います。<br><br>>しかし最後の 3 ページが深くて、<br>あの最後の3ページとひびきあうなあ、と思う作品は、村上春樹『アフターダーク』、浅野いにお『虹ヶ原ホログラフ』、マイクル・スワンウィック『グリュフォンの卵』収録の「クロウ」、そしてグレッグ・イーガン『順列都市』あたりでしょうか。

_ 虹を指さすな(001) (2006-10-09 08:58)

(あ、増えてる! いーや、開き直って書いちゃお) 雪雪さん、お久しぶりです。<br>もし「反応したいところ/ゆっくり」が終了したら、遠慮なくおしえてくださいね w<br>安心して(?)、上のほうだけ読む日々に戻りますので。<br><br><br>>「仲間だ」という感じはいたしませんでしたw<br><br>あらら、わざわざ読んでくださって、すみませんでした。<br>私がもし書店員で棚をつくったとしたら、そうとう文脈意味不明そうなので、<br>適切に並び変えていただかないと、いけないでしょうね w<br><br>とはいえ、『失われた物語たちの墓』の名誉のために、<br>(って別に思い入れがあるわけでもないですが)少しだけ弁解いたしますと。<br><br>全体としてみれば、たしかに、<br>「技巧と素養のある作家が、このテーマでとりあえず書いてみました」だと思います。<br>ただ、p 138 だけはコピーして、 1 枚『記憶の国の王女』に挟んでおいてもよいかと。<br>こんな部分↓に激しく反応してしまったので、一気に類書化しました。<br><br>  “死んだ物語たち”を、いちばん喜ばせるものは、<br>  どこかの子供たちが“彼女たち”のことを考えてくれること、<br>  物語を語りあってくれること…… <br><br>     (人様に薦めておきながら自分も立ち読みなのでうろおぼえ w)<br><br>『記憶の国の王女』の、あの物語のままのシルヴィのほかにも、<br>たぶん物語になれなかったシルヴィも何人かいるはずで、<br>そのことに、物語になれたシルヴィがふと気付く、<br>ということを、どこかの子供が考えたりする、<br>という物語がどこかで語りあわれる、<br>ときの物語は、“誰”が語るのだろう、シルヴィ? “どの”シルヴィ?<br>と思えば、ちょっとパラレルな類書になるような気がしまして。<br><br>……って、あまりに極地的、個人的妄想すぎましたね。<br><br><br>でも、おかげで思わぬ収穫、またしてもご紹介ありがとうございます。<br>以前『記憶の国の王女』には類書がないかも、とのことでしたが、<br>ようやく並べてあげる本ができたようで、嬉しいです。<br>では、飛浩隆『グラン・ヴァカンス』、まっしぐらに探します。<br><br>『虹ヶ原ホログラフ』は、別の意味で気になる紹介を見かけたのですが、<br>そうですか、ひびきあいますか……。<br>とすると、ちょっと想像がつかないので、これもリストに追加です。<br>村上春樹もある時期から読んでいないので、これを機に。<br>あとはさすが SF 系男子ですね、未踏のジャンルなので興味大。<br>『自己喪失の体験』も読みたいし。<br>って、また結局、全部ですが w<br>すぐに反応できなくて、すみません。<br><br><br>>でも、知らない作品を紹介してもらうのはたいへん嬉しいです。また教えてください。 <br><br>それは栗田さんに輪をかけてインポッシブル…… w<br>(というより雪雪さん式ナイスフォローのほうかな?)<br><br>しかし「類書/ひびきあう」を並べてみるのって、ポーカーみたい。 <br>自力では弱い手しか作れなさそうですが、<br>カードを配ってくれた書店員さんのお手柄ということで。<br>先日、これはなかなか!なワン・ペアを見かけました。<br>マルケスの新刊『わが悲しき娼婦たちの思い出』のお隣に、<br>マルケスの言葉を帯にした本が。<br><br> 「この本は、覚悟して読むように。作品の裏にひそむまことの知識、<br>  凶器のように美しいユーモア、なんと危険に満ちた作品であろうか。」<br><br><br>並べた方の思うツボにはまり、思わず手に取りました。<br><br>  『黒い羊』 アウグスト・モンテロッソ  書肆山田 2006 / 07  2,100-<br><br><br>いったい何だろうと目次を開くと、たくさんタイトルがならんでいて、さらに???。<br>「寓話」集でした。(寓話も、超短編のご先祖ですよね?)<br><br>表題作、黒く笑えました。<br>雪雪さんなら、『夢見るゴキブリ』の文法あたり、いかがでしょうか?<br>全編、ある意味、古典の域に達しているので、安心して読めます。 <br>ハズレならマルケスのせいだし、当たればしめたもんです w<br><br><br><br>あと、これはお礼で、日付け異なりますが、ついでにここに。<br><br>オリアーナ・ファラーチ『ひとりの男』、古書で無事、入手できました。<br>(アマゾンのユーズドなどには、底値 730 円で出てました。<br> もと図書館の蔵書まであったようで……)<br><br>カバーのインタビューと冒頭から想像し、<br>最初はいったいどんなお話なのか、見当がつきませんでしたが、<br>読んでみると、どんどん引き込まれました。<br>といって中断しがちなのですが、あと 1/3 くらいの位置に栞が来ました。<br>(中断しても、内容ばっちり忘れさせない本ですね)<br>ひさびさの 2 段組、全 p 536 の厚さと重さに腰がひけましたが、<br>思想その他を深読みしようとしなければ、まるでエンタメ系を読むごとく、<br>腰を据えて!の気合いがなくても、意外と読めちゃう面白さです。<br>ところどころ、笑えもします。<br>今どきなら、登場人物がものすごく「キャラ立ち」している、とでも言われそうな。<br>もっとも、現実のノンフィクションの世界でも、<br>この手の人々は、みなさん強烈なキャラなのでしょうが。<br><br>しかし、これを「地上最強の恋愛小説」と言い出した人も、切れますよね〜。<br>そういう読み方で、今回読み始めさせていただけたのは、思いがけない幸運でした。<br><br><br>   p 160     訳:望月紀子<br><br>  「あなたは来てくれた、ぼくらはめぐり会えたのだ」<br>   恐ろしいことだった。なぜなら、とつぜんすべてが明らかになったから。<br> (……)わたしの思想上の選択と道義上の義務、そしてあなたが実現を目ざす、<br>  あるいは目ざすとわたしが望むものとの総決算だけではなく、<br>  一対一の闘いが、危険このうえもない愛で愛しあうようになる<br>  ひとりの男とひとりの女の邂逅が、くりひろげられようとしている、<br>  と認めることなのだから。<br>   その愛は、思想上の選択、道義上の義務に、個人的魅力やさまざまの感情が<br>  混りあったものだ。わたしは手を引き、テーブルの下に隠した。(……) <br><br><br>   p 185<br><br>   あの声。あの目。あの声には、あの目には、デーモンがやどっている。<br>  信念のためなら自分の命も他人の命も投げ出し、自分の感情も他人の感情も、<br>  自分の知性も他人の知性も犠牲にするような、どんな不条理でも犯してしまう。<br>  悪魔に取り憑かれた男の、めらめらと、つめたく燃えあがる、制御のできない情熱が。<br>  しかし、女として、これまで聞いたこともない、比類のない愛の告白で、<br>  あなたの言葉はおわった。それは何千回の抱擁よりも、愛の夜よりも、<br>  ジャスミンの木よりも、サガポ・トラ・ケ・サ・サガポ・パドテ、<br>  きみを愛している、いつまでもきみを愛する、という言葉よりも価値がある。<br><br><br>その「比類のない告白」、おそらく全く日常の恋愛では使えません w<br>ただ、こういう映画があっても、こんな適切なセリフはなかなか書けないでしょうね。<br><br><br>では、またしてもご紹介ありがとうございました、でした。<br>今日も長くなりましたが……<br><br><br>  前回・誤)何卒お許しくださいを。 → 正)何卒お許しを。

_ 雪雪 (2006-10-12 13:55)

☆虹を指さすな(001)さん、毎度どうも。<br>モンンテロッソ出たのか!<br>モンテローソ表記のほうがなじみなのですが。<br>この人は、日本の超短編の開拓者本間祐氏を超短編にめざめさせた作品を書いた作家として、その筋では名高い作家でした。要チェックだなあ。<br><br>>以前『記憶の国の王女』には類書がないかも、とのことでしたが、<br>あ、それは不用意に言葉を使いました。強い意味では、やっぱり類書はないみたいです。<br>現実に遡行してくるようなメタフィクションはたくさんあります。すぐれた作品は丹念に編み上げられた繊細な製作物で、たとえば『はてしない物語』などは、あの装丁も物語の一部ですから、少年文庫なんかにしたら雰囲気ぶちこわし! という感じがいたします。<br>それにひきかえ『記憶の国の王女』は、たとえば邦題なんか作者の意図をぜんぜん汲んでないんですけど、あんまり気にならない。物語のくせに丈夫というか元気。自力でどこまでも旅して行きそうな。本の力が本の外に及んで、元の形を失ってしまっても生き続ける、微笑ましいしぶとさがあります。そこがとっても特別だと思うのです。<br>物語たちが自立して、新天地を求めて旅立つときには、その先頭をちょこちょこ走っていそうです。<br><br>それはそうとw こちらは、地道に反応していきますので、次のレスは新しい日付に移行してください。埋もれちゃいそうでもったいないから。