_ 昨日今日と、気象用語で言う「大気の異常透明」で遠くがよく見える。
昨日は視程が60キロあったということだが、今日はもっと見える気がする。ふだん見えている山の連なりの向こうに、おぼろにもうひとつの稜線が見えるのもすごいが、近景の解像度がすごい。
河原に立っている樹が、一本の樹というより葉っぱの塊に見える。一枚一枚の葉っぱが自我に目覚めたみたいに、風に揺さぶられながら日の照り返しで歓声を上げている。
川向こうの遊歩道を通り過ぎてゆく自転車のおばさんの、ごきげんな表情までわかる。おめでとう。誰に会うのかな。
なんだか懐かしい気分になるのは、「はじめて眼鏡をかけた日」の印象に似ているからだろうか。
_ 昨日世界が眼鏡を拾って、かけてみたら度数が合っていて、今日はレンズを拭くことをおぼえた、みたいな。