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雪雪/醒めてみれば空耳

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2004-05-04 叙景集

_ 607

通い慣れた街並だというのに、夜闇にまぎれれば迷ってしまう。

そんなふうに脳内に夜がきて、いつもの筋道が見慣れない考え。

そんな街角で街灯がぼんやり、視程のむこうまで続いている。

だんだん滲みながらちいさくなって

道ではないのだけれど通れる場所を

教える。

考えのなかから思考が出て行く刻限。

.

もうそんな時間?

もうそんな時間?

もうそんな時間?

.

残響で、まとまらない考えが、思考にぶつかってくる。

夕まぐれの羽虫のように。

顔にかかって、前からくる羽虫ばかりが気になるけれども、後ろからもくる。

.

_ 608

声を砕く。

.

_ 609

雪の上で砕けた炭のように、冬の野の上に葬列がある。

誰にとっても謎めいてあるような女にとって謎めいている男が、葬列の中に混じっている。その謎を言い当てる人はいま、棺のなかにのんびりといる。今後永久にのんびりしていてくれるようにと女は祈る。

その横顔を盗み見て男は、「心配事のある女はうつくしい」と思う。

心配事の質が、女のうつくしさを決定する。

そう言った人は今、この情景の視界内にいない。

太陽はゆっくりと昇りながら、じぶんが昇っていくごとにうつろう、物の影の長さを測っている。

影がひとつ、みずからが何ものの影なのかを、気にしはじめる。

.

_ 610

てのひらに溜めた虹をとろとろと我が子の瞳に流す

.

_ 611

◆決定論◆

一者択一。

.

_ 612

星々の

あいだを渡りゆくものの

ひづめが残す連なる三日月