扉がひとつもない長い廊下がいつのまにか蔓草に蔽われた吊り橋にかわり、きわどく思いつかれそこなった着想の森に出る。
よじれた樹々の葉むらからは、いましも次の色彩によろめこうとして、別の光を求めてもだえる葉たちのざわめきがとめどなく滴り落ちている。
幾度も吸われ吐き出されて、じぶんを植物だと思い込んでいる森のいきれさえ、わたしの鼻粘膜を避けて漂う。
不満たらたらの、こころざしばかりむやみに高い草木たち。
翼あるけもののかたちだけを得た潅木たちは、まだゆっくりした知覚しかないものだから、飛び立つ速度に心が追いつけずにいる。いたずらに樹幹やおたがいや地面に突っ込んでいっては、ひしゃげたり弾んだりして、あたりにはみどりいろの、淡い羽毛が散り敷かれてゆく。