まっくらな星空

長男。
アレルギー性の結膜炎に加えて、眼に傷があることもわかり、目薬4種類を一日３回ささなければならない。目薬をさす際、嫌がるので「一瞬だから！」と言うと、「二瞬でしょ」と言い返してきた。両目だから一瞬×2で二瞬というわけで、なるほどそうだねと受け入れてそれからは「二瞬だから！」と言うことにしている。

次男。
歯磨きの真似をするのが好きで、他の人が歯磨きをしている傍らで歯ブラシを口につっこんで動かしている。ちゃんと専用の歯ブラシもある。与えないとわたしの歯ブラシでやられるので仕方なく。
さっきの話。夫が長男に「歯、磨くよー」と誘い洗面所に向かおうとしたところ、遊んでいた次男の方がすくっと立ち上がりスタスタと洗面所に向かい、夫に自分の歯ブラシに歯磨き粉をつけさせ(実際にはつけてません)、とうぜんのような顔をして歯磨きはじめた。
「はみがき」という言葉を憶えてしまったということか。これから数年のあいだは、彼の歯磨きというものは親が磨いてあげるものなんだけど。

この他にも、わたしが夫と長男に「ご飯だよー」というのを聞きつけて「うあんー」と真っ先に席に着こうとするのだが次男のお椀はまだ用意されていなかったりと、そんな具合に、ほめたいけど違うんだ、お前に言ってるんじゃないんだよ、と言いたくなることがよくある。

昼間、暑いなか、少し嫌がっている長男を連れて眼科に行ったら臨時に休みだった。
ショック。その場で、長男には隠しておいたペットポトルの飲料をかばんから取り出し飲むと、それを見ていた長男にニマニマ顔で「病院休みだったから(自分を自分で)なぐさめてるの？」と言われてしまった。

次男は歌を聞くのも歌うのも好きで、子ども向けCDをかけるとよく踊っている。
ある童謡の歌がスピーカーから流れたとき、ボタンを押すと歌の鳴る絵本の同じ歌のボタンを次男が押したので、褒めて頭をなでてあげた。その後同じことが何度かあった。
わたしが離れている場でその歌が流れたときには、次男は歌の絵本のボタンを押してわたしのところへやってきて、自分で頭をなでていた。
さらにその後、食事中ハイチェアにすわっているときにその歌が流れると、頭を自分でなでていた。

次男を見ていると、典型的だな、と思うことがよくある。
子どもに対する世間一般のイメージをそのまま体現している、といったら言いすぎだが、それに近いものがあるような気がしてしまう。
たとえば、朝起きて晴れていたら喜んで外に遊びに行きたがるような。長男が、晴天の日に出かけると「まぶしすぎるよ・・・」と盛り上がらない子なのでなおさら、そういう気がしてしまうのだろうとは思う。

しょっちゅう、うそ泣きというか怒りのアピール泣きをしている。涙まで出ることもあるそれなりに必死の泣きではあるのだが、今日のうそ泣きでは、双眼鏡を持っているような形にした両手を目の下に添えるポーズを出してきた。
そんな、典型すぎて誰もしないようなうそ泣きポーズを本気でやっちゃうんだな。

学校の話。
「Oくんにはお兄ちゃんがいるんだよ」といい、その名前まで知っている。それは放課後、Oくんに似ている上の学年の子が近くで掃除をしていて、体操着を着ていたのでゼッケンを見たら同じ名字だったから兄弟だと思い、そのすぐ後に周りの子の話で事実確認もできたらしい。
すべて誰とも話さずに観察しただけの話。こういう話がけっこうある。

学校での話をきいていると、あるイメージが抱かれる。
他の子たちが柵で囲まれた中にいて、長男はそれを外から眺めている。その柵の中の子たちは基本的に長男のことを見ていないが、ときどき話しかけてくることはあり、それは長男にとって嬉しいことで応じるのだが、自分から声をかけることはめったになく、ましてその中に入って行くことはない。

長男が学校でなかなか楽しくないことがあるらしい。このままエスカレートしたらいじめになるような、けれど今の段階ではごくごく普通の、よくある他の子からのからかいや八つ当たりのようなこと。
長男がその話をするのは、辛いという訴えや嘆きというよりは出来事の報告で、そのために学校に行きたくないということではないらしい。
それでもわたしは気になって悩んで胃が痛い。

保育園のころにもときどき感じたけれど、わたしが思っている以上に長男は家の外でいろんな思いをしてそれを彼なりに消化している。すべて本人任せにするにはまだ早いけれど、今のは信頼して見守るしかないのだ。
気をもむよりも、長男がわたしたち親に何を求めているか、彼が安らぐためにできることは何かを考えなければならないんだ。

そうでなくても、小学生になってからというもの、足腰が弱すぎるとか、声が小さいとかプールを怖がりすぎとか、具体的なことにばかり気を取られて心配するばかりで、長男に関して視野がとてもせまくなっているような気がする。

長男。
今日はわたしの仕事が休みなので学童クラブには行かずに昼過ぎに帰ってきた。前回同じように帰ってきた日には、同じ下校班の子たちと遊ぶことになって帰宅後すぐに出かけて公園で一時間くらい遊んできたので、今日も同じ運びにならないかと期待があったようなのだが、今日はそういう話は出なかったらしい。
それで未練があるのか、家の近くの電柱の側でしばらく立っていたが、そこで公園に行くことを思いつき帰ってきたらしい。

その思いついたときの自分の様子を再現してくれたのだが、拳にした右手で左手の手のひらをたたいてパッと嬉しそうな表情をし、「頭の中のコビトがこんな風にやった」とのこと。
こんな具合によく冗談を言う。

学童クラブに迎えに行くと、ちょうど別のクラスの一年生の女の子も迎えの時間だった。同時に門をでて母親同士は挨拶をして別れたが、その女の子が「あの子だれ」とお母さんに尋ねているのが聞こえた。
かたや息子は、わたしにその子の名前と、みんなに何と呼ばれているか等おしえてくれた。

気持ちがのってくると学校や学童での話をいろいろしてくれる。誰と誰が友だちだとか仲が悪い等の情報もあるが、○○ちゃんは××に似てる、という話が多い。
クラスでいちばん大人しい子は？と聞いたら、朝の出欠の返事をするのも難儀らしい女の子の名前を挙げたが、次に大人しいのは自分だとのこと。 そういうこと、つまり自分は他の子のように積極的に皆と関わることをせずひときわおとなしくしている子だということを、いいことでも悪いことでもない単なる事実として受け入れている様子なのだ。
それで、他の子にあまり関心がなく一人遊びが好きというならわかるが、周りをよくみて名前や特徴をおぼえるし、そればかりでなく、保育園や学校以外の場所で友だちと一緒になるととても嬉しそうなのだ。

次男が長男の髪の毛を引っ張ったので強く叱る。向き合って怖い表情で強い口調で。すると目を伏せて口をかるくとがらせている。この時点ですでにこちらは顔がほころびそうだがこらえて「ごめんなさいは？」と厳しく言う。すると頭をひょこんと下げる。じつはこれが見たくて謝るよう指示しているようなもので、「よくできたねええ」と抱きしめてしまう。
喜んで嬉しそうで、叱った意味がほとんどない。むしろますますはしゃいでしまい、今度は夫の頭をかじりかける。
そこでまた叱るが同じことの繰り返しになりわたしは笑顔になってしまう。が、夫がしゃれにならんという顔をしているので、真顔にもどす。
それでも次男が夫の頭をなでて「いたいいたいとんでけー」をしているのを見ると、やっぱり笑ってしまう。次男も褒められることがわかってやっているにちがいない。
全体として一つの遊びみたいになってしまっている。

来週の運動会で踊るダンスが忍者になりきるもので、たいそう気に入ってるらしく、その踊りの説明を丁寧にされている。
自分で考えた仮面ライダーの話を長々とするときと同じような調子で一生懸命話すのだが、そういう話のときは、こんなんでいいのか？というくらいいい加減に相づちをうっていても、とりあえず見て聞くポーズだけとってあげれば、長男は気が済むらしい。
むしろ、積極的に聞いて途中で質問したりして話の腰を折ってしまうと怒られることがある。

昨日の夜はその説明がひととおりすんだあとで、ある女の子の名前を出し、その子に手紙を書こうかなと言い出した。
仲良くなった子とお手紙交換か？とよろこびながら、よく聞いてみると、その子がダンスでいつも同じところで間違うので指摘・注意するために手紙を書きたいとのことだった。
ダンスの成功にかける意気込みはわかるが、直接言えばいいじゃん・・・