黄の王女

幼い彼はながい大気の道を耳でたどっていく。
かるく曲がってわだかまる。
やわらかい砲音が鳴る。
ほんのわずかな歴史のために響いていく。

あの子は明日も船乗りになるんだって。
そんな約束だれも憶えていないのに。
ずっと大切にするつもりだった黄ばんだ国。
やっと今生まれようとしている言葉の果て。

遠い方角の群れがマストから踊りでたその時を
幼い彼はいつまで憶えているだろう。
いつまでも考えないでいられるのだろう。
時は若い猿のようにかしこいということを。

もうきみのパレードがはじまる、と王女は告げる。
いつでもはじめることはできたのに。
でもその音楽にはさよならしたほうがいい。
そしてきみの金色の耳にも、と王女はささやく。