記譜法

母の思いが路傍に眠っている。
冷たい銅線をたぐっていく原っぱは、ぼくは
母が大好きだということを知っていたんだ。
プレゼントでもしようか。

五線譜に書きなぐられた戸惑いが
いつも夜のはじまりを思わせるから
なんの交歓があるのか知らないまま
念入りに書き写していく。

いつしか野原は巻きとられてしまって
回想から遠ざかるだろう。
そしたらぼくの両の眼は年老いた狐となって
誰も知らない記譜法を考案する。