女の子は、熊の足音を抱きかかえている。 もの静かな四つの響きに 今、負ったばかりの爪の傷が見えかくれして 蜂蜜がしたたり落ちる。 洋菓子の焼ける甘い匂い。 横木にもたれて パパの帰りを待っていると 凧糸のような自分自身の眼差しを カレンダーの今日に縫いとめておきたい思いにかられる。 ちょっと悪戯な思いつきで、 かろやかにステップを踏む。 冬の日射しをすこし蜂蜜にまぜておく。 自転車のベルが坂道の遠くから、勢いよく降ってくる。