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2006年01月25日

書籍『八本脚の蝶』

二階堂奥歯さんの遺した「八本脚の蝶」が、書籍になった。
表紙を画像ファイルで見せていただいた時から美しい装丁だと思っていたが、手に届いてみるとチャーミングで力強くて神秘的で切ない。彼女のことを思い出します。

僕にとっての奥歯さんは、他人との距離感をいつも意識している人だった。
もちろんエキセントリックな面は彼女の大きな特徴だと思うけれど、そこには押しつけがましさというものがなかった。仮に押しつけがましい振る舞いをしたとしても、それは大概の場合、ある程度の計算のうえでそうしていたのではないかと思っている。(彼女が計算を外すことがまるでなかったとは言わないが。)
他人の縄張りを荒らすような言葉を、ほとんど無意識に口にする人がなんて多いだろうか。でも、彼女はそのようなことをする人ではなかった。ただ、他人になにか働きかけるということ、その力には、根本的な信頼を持っていたのではないかと思う。そのバランスのうえで、僕にとっては友達としてとてもつきあいやすい人だった。
知り合ってあまり話もしたことがなかったころ、たまたま夜道を二人で歩く機会があった。あまり会話はしなかった。黙って歩いていた。
少し歩いて、奥歯さんは「M君はあまり話さなくてもいいと感じるから気が楽」だと僕に言ってくれた。
その言葉で彼女は、僕の縄張りを侵害しないことを宣言しつつ、友達になってくれようとしたのだったと思う。

Webの「八本脚の蝶」はそれほど読み返したりはしていない。本が手もとにあると、ふとページをめくることができるのがいい。
折々に彼女の考えを聞けて、世界の広がりを実感していたころを思い出す。
会いたいなあ、と自然に思う。

投稿者 mit : 2006年01月25日 01:06

コメント

「八本脚の蝶」、早速注文しました。
改めて本で奥歯さんワールドを堪能したいと思います。

お仕事忙しそうですが、お体を大切に(^^)
日記の更新楽しみにしてます。

投稿者 obi : 2006年01月25日 14:28

ありがとうございます。
また忙しくなってきたので、もうひとふんばりしたいと思います・・・。

投稿者 mit : 2006年01月27日 00:33